正しく証明・計算の結果が学術的に本当に正しいかどうかは保証できません…ご了承くださいm(__)m
学生の方であれば、疑問に思ったところなどは教授・助教授、その他周りの方に確認してくださいね。
もし、コメント等でご指摘いただければ有難いです。
【問題】空集合が一意に定まることを証明せよ
空集合の公理が主張する集合(空集合)が一意に定まることを証明せよ
$\exists A \, \forall x(x \notin A)$(要素を持たない集合が存在する)
回答
空集合の公理が主張する2つの集合を$A$、$A’$とします。この2つの集合が$A=A’$であれば、空集合の公理が主張する集合は一意に定まることが証明できます。
空集合の公理が主張する集合を適当に2つ選びます。それらの集合が等しくなる場合、2つ選んではいますが、実質1つの集合です。よって、空集合の公理が主張する集合は1つしかないといえます。
外延性の公理より
外延性の公理より、どのような集合$A$、$B$に対しても$ \forall x(x \in A \leftrightarrow x \in B) \to A = B$は「真」となります。つまり、$ \forall x(x \in A \leftrightarrow x \in B)$であれば、$ A = B$となります。
$\forall A \, \forall B \, (\forall x(x \in A \leftrightarrow x \in B) \to A = B)$($A$と$B$が全く同じ要素を持つのなら$A$と$B$は等しい)
公理とは議論する上での前提条件なので、無条件で成立します。
ここで、証明に役立つ含意($\to$)の性質より、任意の$x$に対して$x \in A \leftrightarrow x \in B$が「真」であることを示せれば、 $A = B$を証明できます。
従って、集合$A$、$A’$に対して、$ \forall x \, (x \in A \leftrightarrow x \in A’)$が「真」であることを示せれば、 $A = A’$を証明できます。
$\forall x(x \in A \leftrightarrow x \in A’)$が「真」を示す
$A$、$A’$はともに空集合の公理が主張する集合なので、$\forall x(x \notin A)$、$\forall x(x \notin A’)$が「真」です。$x \notin A$の否定は$x \in A$ですので、$x \in A$、$x \in A’$はともに「偽」です。
$x \notin A$ | $x \notin A’$ | $x \in A$ | $x \in A’$ |
---|---|---|---|
T | T | F | F |
$\forall x(x \notin A \leftrightarrow x \notin A’)$の真偽は下記になります。
$x \notin A$ | $x \notin A’$ | $x \in A$ | $x \in A’$ | $x \notin A \leftrightarrow x \notin A’$ |
---|---|---|---|---|
T | T | F | F | T |
$ \forall x \, (x \in A \leftrightarrow x \in A’)$が「真」であることを示せましたので、$A=A’$となります。よって、空集合の公理が主張する集合(空集合)が一意に定まることを証明できました。
Q.E.D.
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備考
外延性の公理より、$\exists A \, \forall x(x \notin A)$を満たす集合Aは一意に定まることが証明できました。よって、このような集合は1つしかないので、「空集合」と呼びます。また、$\emptyset$や{}という記号で書くことにします。
また、空集合は一意に決まるので、$\exists! \emptyset \, \forall x(x \notin \emptyset)$と書くことができます。
キーワード
気になる人は調べてみてね。
公理的集合論、外延性の公理、空集合の公理、空集合($\emptyset$、{})論理式、全称記号($\forall$)、 等号(=)、含意($\to$)、同値($\leftrightarrow$)、Q.E.D.
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